住所:奈良県橿原市久米町650−1   電話:0744−28−4133 よいみみ

北奥耳鼻咽喉科

   

見て理解する耳鼻咽喉科疾患

<上顎癌>

 頬部痛や血性鼻漏、一側性鼻閉などの症状がある。ほとんどが扁平上皮癌。癌の進展方向によって複視、頬部皮膚腫脹、歯痛・歯肉腫脹などの症状が現れる。

 治療には三者併用療法(放射線療法、化学療法、手術)が行われる。

 

<耳下腺腫瘍>17a1a2b1b3

 良性の多形腺腫やワルチン腫瘍が多い。しかし、多形腺腫を長期に放置していると悪性化が起こることがある。悪性腫瘍としては粘表皮腫瘍や腺様嚢胞癌などがある。

 手術では浅葉と深葉の間を顔面神経が通るので、その保存に注意を要する。悪性では神経を犠牲にして切除することも多いが、その場合は神経移植などの考慮が必要となる。

 図17aでは深葉の多形腺腫のMRIを示す。図17b1のCTでは正常耳下腺内に造影剤を口腔から唾液の流れに逆行して入れて、腫瘍と正常耳下腺とを明瞭に示している。静脈石らしき石灰化と、耳下腺部の圧迫によって容易に腫脹が減少することから、海綿状血管腫が疑われたが、病理組織診断では海綿状リンパ管腫であった。

図17a1:耳下腺多形腺腫水平断

図17a2:耳下腺多形腺腫冠状断

図17b1:耳下腺造影後CT

図17b2:造影CT1

図17b3:標本割面

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<顎下腺腫瘍>

 良性の多形腺腫が多いが、耳下腺腫瘍に比べて悪性腫瘍の割合が高い。約1/3が悪性腫瘍といわれる。

 手術では顔面神経の下口唇への分枝が近接しているので、保存に注意を要する。また、顎下腺底部では舌神経・舌下神経が近接する。

 

<唾石>

 顎下腺から口腔内へ唾液が流れる通路(顎下腺管、またはワルトン管)に沿って、唾石が生じることがある。食事の際に唾石によって唾液の流れが滞り、顎下部痛が出現する。また、細菌感染を起こすこともある。口腔底で触知できる場合は口腔内からの小切開で摘出できるが、顎下腺内や顎下腺に近い顎下腺管に唾石があれば顎下腺と共に摘出する。砕石を試みている報告もある。

 

<がま腫>

 舌下腺の貯留嚢胞。口腔底に大きく開口するように切開縫合することで解決することが多い。

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<急性扁桃炎>

 起炎菌は連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌など。咽頭痛が強く、嚥下時に増強する。発熱、頭痛、全身倦怠感もある。

 

<扁桃周囲膿瘍>

 急性扁桃炎に続発して膿瘍が出現するものがほとんどであるが、歯性炎症から続発するものもある。口蓋扁桃周囲の発赤腫脹が著明で、嚥下困難、開口障害が出現する。治療は切開排膿のうえ強力に抗生剤投与を行う。放置すると自潰して排膿することもあるが、頸部へ炎症が波及することが多く、次には炎症が胸部に拡がり縦隔炎となり生命の危機にさらされる。

 

<伝染性単核球症>

 EBウイルスによる感染で、発熱、リンパ節腫脹、単核球増多などがある。扁桃炎による咽頭痛や頸部リンパ節腫脹が著明。肝機能障害も出現しやすい。発熱も420日間と長期化しやすい。

 

<インフルエンザ>18図18:インフルキット

 インフルエンザウイルスによって38℃を超える高熱、全身倦怠感、上気道炎症状で突然に発症する。潜伏期間は1−3日間。日本では冬季に流行する。高齢者での肺炎や乳幼児での脳炎などの合併は生命に危険が及ぶことから、インフルエンザ流行前のワクチン接種が勧められている。発症48時間以内であれば抗ウイルス薬が著効するため、鼻汁などを迅速診断キットによって検査して判定する。図の検査キットではA型陽性(菱形が染まっている)を示す。

 

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<慢性扁桃炎>

 急性扁桃炎の反復するもので、急性炎症がおさまっているときには自覚症状は軽微で、咽頭の異常感や微熱、疲労感、口臭などがある。病巣感染(慢性感染性炎症の原病巣があって、そこから離れた他の部位に二次疾患をひきおこすこと)を起こす原病巣となることがある。IgA腎症や心筋炎・心内膜炎、皮膚に対する掌膿疱症・乾癬・多形滲出性紅斑、胸肋鎖骨関節炎などが指摘されている。

 

<腺様増殖症,アデノイド>

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 咽頭扁桃が肥大したもの。生理的には6,7歳頃に最も大きくなり、その後は漸減していく。また、慢性炎症によっても肥大する。咽頭扁桃は固有鼻腔の後方に位置し、耳管の咽頭開口部が近接するため、肥大によって呼吸と耳に対する症状が出やすい。閉鼻声、口呼吸、いびき、滲出性中耳炎など。

 

図19:咽頭扁桃

 

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<味覚障害>

 味覚に関与する神経は顔面神経(鼓索神経、大錘体神経)、舌咽神経、迷走神経である。たとえば鼓索神経が慢性中耳炎で障害をうければ舌の片側前方2/3の味覚が損なわれる。しかし、一般的には神経支配による左右差よりは口内全体の味質(甘味、塩味、酸味、苦味など)の感覚が低下して味覚障害を感じることが多い。味覚障害は亜鉛の欠乏(偏食、薬剤性など)や唾液の減少(シェーグレン症候群や糖尿病などの全身疾患、薬剤性など)でおこることが多い。亜鉛は牡蠣に多く含まれ、豆類、肉類、卵、紅茶や緑茶にも含まれる。ヒトの亜鉛の一日必要摂取量は15mgとされている。

 治療効果は舌前方・後方の同時にか、もしくは舌後方から回復してくることが多い。ちなみに、味覚を感じる受容器である味蕾は舌咽神経領域に多い。

 

<舌癌>20ab

 歯牙や義歯による刺激や口腔内の不衛生、喫煙や飲酒などが誘因になっていると指摘されている。原病巣が小さくリンパ節転移のないものは放射線療法(外照射やセシウム針、放射性金粒子などによる組織内照射 )も適応だが、舌癌はリンパ節転移をきたしやすく、術前にリンパ節転移を認めていなくても手術で頸部リンパ節転移を証明されることもあるので、一般的には手術が行われる。切除範囲が大きくなれば有茎による大胸筋皮弁や広背筋皮弁、遊離による前腕皮弁や腹直筋皮弁などで欠損部を再建する。

図20a:舌癌

図20b:大胸筋皮弁再建後

 

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<悪性リンパ腫>21a1321b

 リンパ組織由来の悪性腫瘍で、頸部リンパ節腫脹で受診することが多い。頭頸部の悪性リンパ腫としては扁桃原発が多いが、副鼻腔、唾液腺、甲状腺などにも見られることがある。全身疾患なので骨髄検査や腹部などにもリンパ節腫脹がないかどうかの検索が必要で、治療は化学療法が中心となる。図21aは左口蓋扁桃原発で頸部リンパ節腫脹も認める。図21bは上顎洞原発の悪性リンパ腫で、上顎洞前壁を破壊して腫瘍が上顎洞外へ浸潤している。

図21a1:左口蓋扁桃悪性リンパ腫

図21a2:CT1

図21a3:CT2

図21b:右上顎洞悪性リンパ腫CT

 

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<発声について>

22、動画2

 左右の声帯が閉鎖しているときに呼気が声帯部を通過して声帯を開放する。そしてまたすぐに声帯は閉鎖して、引き続く呼気によって再び声帯は開放される。その繰り返しの際に起こっている声帯の振動が声の原音である。成人男性は約125Hz、成人女性は約250Hz、子供では約300Hzの周波数である。この喉頭原音を咽頭、口腔、鼻腔で共鳴させることによって声となっている。図で喉頭の名称の説明を、ビデオで普通の発声とささやき声の時の声帯の様子を示す。

Video2

 

図22:喉頭名称

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<喉頭軟弱症>動画3

 出生後、あるいは23週間後からおこる吸気性喘鳴が特徴。喉頭が小さく、喉頭上部組織が軟弱であるため、吸気時に喉頭上部組織が落ち込み、振動を起こす。泣いたりすると喘鳴が強くなりチアノーゼが出現する。4ヶ月から2年くらいで自然に消失する。呼吸困難が強い状態になると気管切開せざるを得ない場合がある。ビデオで生後3ヶ月の男児の状態を示すが、音声は入っていない。抃ideo3

 

<急性喉頭蓋炎>23ab

 喉頭は呼吸の通路で最も狭いため、この部分での腫脹は呼吸困難を来しやすい。多くは炎症周囲の浮腫も伴うため、ステロイドを併用して抗生剤で治療する。呼吸困難が著明な場合は気管切開を行って救命する場合もある。

図23a:急性喉頭蓋炎

図23b:急性喉頭蓋炎

 

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2005 Kitaoku Ear-Nose-Throat CLINIC